ワインセラーの選び方~おさえておくべき3つのポイント
ワインにはまってくると欲しくなるのがワインセラー。機能も価格帯もさまざまで、選ぶのに非常に迷うのではないかと思います。ここでは、ワイン関する基礎知識や雑学を交えながら、ワインセラーを選ぶときに注意すべきポイントをご紹介します。
温度管理について~ワインの適切な温度とは?
ワインにはワインが理想的に賞味されるための適切な「供出温度」というものがあり、日本ソムリエ協会の教本では以下のように定義されています。
- 適温(℃)
- ワインの種類
- 6~8
- シャンパーニュ(スタンダードクラス)、その他スパークリング
- 8~12
- シャンパーニュ(プレステージクラス)
- 6~8
- 白ワイン(甘口)
- 6~12
- 白ワイン(辛口)
- 10~14
- コクのある上級白ワイン
- 14~16
- 黄ワイン(=ヴァン・ジョーヌ)
- 6~8
- ロゼワイン(甘口)
- 8~10
- ロゼワイン(辛口)
- 12~14
- 赤ワイン(軽め)
- 16~18
- 赤ワイン(ブルゴーニュ)
- 16~20
- 赤ワイン(ローヌ)
- 18~20
- 赤ワイン(ボルドー)
- 18~20
- ヴィンテージポート
ご覧のように非常に細かいです。ユーロカーブ社のセラーなど高級ワインセラーでは、一定の温度の範囲内でセラー上部が高い温度、下部が低い温度、という「セルヴィテックタイプ」の形で多温度帯を管理できるものがあったり、レトワール社の2ドアタイプのように庫内を分けることで複数温度を管理するものもあります。もちろんこれらは大変素晴らしいのですが、実際の飲食店の現場でも意外と複数温度帯を管理できるセラーを実装しているところはそんなに多くありません。温度帯が一つのみのスタンダードなものでも、ボルドー赤であれば例えば飲む30分前に出しておく、辛口白ワインであればワインクーラーや冷蔵庫で冷やしておく、というように調整が可能ですし、そもそもある程度熟成した赤ワインは滓(おり)があるので、いずれにしても飲む少し前にはセラーから出して立てておくべきです。ちなみにワインはグラスに注ぐと温度が2度上昇する、また冷蔵庫で30分から1時間くらい冷やすと5度下がると言われています。また最初はやや低めの温度で始めて、徐々に温度が上がることで味わいが変化するのを感じるのも楽しいものです。場合によっては手でグラスを温めることもあります。よって管理人自身は、セラーで複数温度帯を管理することにはあまりこだわっていません。
比較的高価なワインセラーはどんな環境でも温度を一定に保ってくれます。しかし安価なワインセラーは、「外気温 – 15度」程度しか冷やすことができないものが多いです(つまり例えばセラーを「15度」と設定しても、外気温(室内温度)が35度あった場合、セラーの温度は「20度」になってしまう)。実は管理人もこのタイプのセラーを持っており、「このセラーには長期熟成するワインは入れない」と割り切っています。また逆に、冬など外気温がセラーの設定温度より低い場合、セラーの温度は外気温に近づき、設定温度より低くなる可能性があります。管理人の住まいのマンションではこの問題はないのですが、北海道など寒冷地にお住まいの方にとっては問題ですので、その場合ヒーター付きで温度調整できるセラーの検討が必要でしょう。しかしながらワインは低温である分には劣化はしませんので、「熟成」ではなく「保存」の観点からは低温は高温よりははるかにマシと言えます。
結論としては、長期熟成(10年など)を考えている場合は、温度を一定に保ってくれる十分な冷却&加温機能があるものを選ぶべきと言えます。冷却機能は冷却方式と密接な関係がありますので、「冷却方式について~メリット・デメリット比較」の項もご参照ください。
湿度管理について~家庭での注意点とは?
ワインの保存に理想的な湿度は70%前後と言われています。もし乾燥しすぎた環境で保存した場合、コルクが乾燥することによって固くなり縮み、隙間から空気が入るのでワインが酸化しやすくなるとも言われます。ただし、幸いなことに日本は比較的多湿な国で、年間の平均湿度は60~70%、乾燥すると言われる冬でも平均すると50%前後はあります。もちろん冬は10~30%という日もあり、また冷蔵庫内の湿度は一般的に20%前後ですので、このような乾燥する時期、環境での保存には注意も必要ですが、日本では湿度の重要性は他の要素に比べると低いものと考えています。
まず多くの人が「ワインを寝かせて保存するのは、コルクを湿らせることによって湿度を保つため」と考えていると思いますが、近年、田崎真也氏をはじめ多くの有識者が「ボトルを立ててもワインの湿度は保たれる」という説を主張しています。その理由は「ボトルを立てた状態でも、ワインがほとんど埋まったボトルの液面とコルクと間の隙間はごくわずかで、湿度は95%以上ある。よって保存環境(外気)の湿度が高ければ、コルクが乾燥することはない」というものです。また「ボトルを寝かせるのは、現実問題として立てた状態ではセラーに大量のワインを保管することが難しい(取り出しにくい)ため」とのことです。言われてみるともっともという気がします。ただこれは、裏を返すと「ボトルを寝かせてさえおけば、外気の湿度が低い場所でも湿度は保たれる」とも言えそうです。「リカーショップ吉田」さんのこちらのコラムでは、ワインを冷蔵庫で10年間寝かせた状態で保存したところ、コルクの乾燥もなく、ワインに劣化は見られなかった旨の検証結果が紹介されており、非常に興味深いので是非ご参照ください。
さて、前置きが長くなりましたが、ここでワインセラーの湿度管理について考えてみます。実は残念ながら、安価なセラーではしっかりとした湿度管理をしてくれるものはなかなかありません。例えばワインセラーのトップブランドの一つであるシャンブレア社のセラーでは、庫内の結露を利用して自動で庫内の湿度が65度以上になるよう調整(加湿)してくれます。では、安価なワインセラーはどうかと言うと、人気どころの中では例えばデバイスタイル社のセラーでは、トレイとスポンジが付属しており、人の手で定期的にスポンジに水を含ませ最下段にセットしておくと、保湿してくれる仕組みになっていますが、ルフィエール社のセラーにはこのようなものは付属していません。よって冬場は自分で小皿などに水を張って同じような仕組みを作る手もありますが、そもそもセラーではボトルを寝かせているので、コルクの乾燥にさほど神経質にならなくてもよいのかもしれません。ちなみにルフィエールのセラーではワインの長期保存は推奨されていません。あるいはもっと言うと、「ワインの熟成」とは「適度な酸化」のことですから、コルクの乾燥により多少酸化しても、一冬越す程度で飲むのであれば「数年分熟成したのと同じ」とプラスに考える手もあるかもしれません。
結論としては、長期熟成を考えている方は、湿度管理が万全な高価なセラーを奮発してもらったほうがよいですが、保存期間が数ヶ月~数年という方はあまり気にしないでよいのではないでしょうか。
冷却方式について~メリット・デメリット比較
ワインセラーには「コンプレッサー方式」「ペルチェ方式」「アンモニア熱吸収方式」の3つの冷却方式があります。それぞれのメリット・デメリットを以下にまとめてみました(メリットを赤字で記しています)。
コンプレッサー方式 | ペルチェ方式 (※家庭用では主流) | アンモニア熱吸収方式 (アブソープションシステム) |
|
---|---|---|---|
仕組み | 冷蔵庫と同じ仕組み。モーターを使用して、冷却ガスを圧縮して循環させる | 電流により冷却・加熱を行う(※加熱はできないものもある) | アンモニアの気化熱によって冷却する |
冷却力 | 冷却力強 | 冷却力弱 | 冷却力弱~中 |
サイズ | 小型から大型までさまざま | 基本的には小型 | 小型~中型(※大型もある) |
重量 | 比較的重い | 比較的軽い | 比較的重い(液体の分) |
音・振動 | 音や振動が大きい (コンプレッサーによる音) | 音や振動が少ない(ファンがあるので一概に静かとも言えない) | 音や振動が非常に少ない(コンプレッサーやファンがない) ⇒経年劣化も少ない |
耐久性 | 耐久性高 | 耐久性低 | 耐久性高 |
電気代 | 電気代安 | 電気代高(気にするほどではない?) | 電気代やや高(気にするほどではない?) |
本体価格 | 比較的高価 | 比較的安価 | 比較的安価だがペルチェ方式よりは高価 |
備考 | スペックに特に明記されていない場合、基本的には冷媒としてフロンガスを使用 | フロンガス不使用 | フロンガス不使用 |
メーカー(銘柄)例 | ファニエル(フロンガス不使用) フォルスター | デバイスタイル ルフィエール | ドメティック(CSシリーズ) エクセレンス(MWシリーズ) |
ただしこれはあくまで一般論です。例えば音や振動が大きいとされるコンプレッサー式でも、「ファニエル」の場合、他社のペルチェ式よりも音が静かであることを公表しています(公式WEBサイト)。実際、管理人が使用しているルフィエールのペルチェ式「LW-D18」は、うるさいとまでは言いませんが、寝室に置くのは厳しいです。一方「デバイスタイル」は、ペルチェ方式の弱点である耐久性の問題を解決した旨謳っており(公式WEBサイト)、各メーカーでそれぞれ弱点を補うべく努力している姿勢も伺えます。尚、「コンプレッサー式の振動はワインに悪影響ではないか?」と思う方もいるかもしれませんが、コンプレッサー式のほとんどのワインセラーでは防振処理が施されており、この点は心配には及びません。電気代については、コンプレッサー式が一番安いのですが、これはスペックに記載されている消費電力(W)もさることながら、コンプレッサーは一日中稼働しているわけではなく、目標温度に到達すると待機状態になるという理由もあります。とは言え、ペルチェ方式でも一日の電気代は20円~50円(※諸説有り)と言われており、「そのくらい大したものではない」という見方もあろうかと思います。
結論としては、詳細はメーカーや機種によって特徴があるのですが、非常にざっくりと言うと、「冷却(温度管理)重視」「長期熟成したい」という方は「コンプレッサー式」、「静音重視」の方は「アンモニア熱吸収方式」、それ以外の「本体価格重視」「長期熟成しない」「バランスよく」という方は「ペルチェ方式」と言えます。