「初心者におすすめのワイン」というテーマで記事を書くにあたって、何をもって「初心者におすすめ」とするかについては非常に悩みました。ちょっと話はそれますが、初心者の方はよくワインの褒め言葉として「このワイン飲みやすいね」という表現を使います。しかし管理人はこの表現が好きではありません。なぜならその言葉の裏側には、「ワインは飲みにくいもの」という前提があり、それがプラスマイナスゼロになっただけにすぎないからです。(【関連記事】ワインの感想を言うときに注意したい4つのポイント)
まあ、百歩譲って「飲みやすい」を褒め言葉として受け入れるとしましょう。ではいったい初心者の方にとって「飲みにくい」ワインとはどんなワインなのでしょうか?そこで、管理人の身の周りにいるワイン初心者の方が、ワインに口をつけて顔をしかめるときの理由を思い出してみました。おそらく「酸っぱい」「渋い」この2つが二大理由であるように思います。
そこで、なるべく「酸っぱい」「渋い」と感じないことをおすすめの条件としました。そして価格帯は1000~2000円に限定。いずれも管理人自身が美味しいと思う、コスパの高いワインです。あえて1000円未満のワインは外しました。もちろん1000円未満でも美味しいワインはたくさんあるのですが、このあたりの価格帯では、100円の差が品質の違いとして大きく跳ねるのも事実。管理人は、700円のワインと1200円のワインには歴然とした差があると考えています。言い換えると、1000~2000円のワインは初心者の方でもまずまず手を出しやすく、それでいてレストランで提供されるレベルの良質ワインです。初心者の方が「ワインでも買ってみようかな」と思ったときのワイン選びの参考になれば幸いです。そして少しでもワインを好きになってもらえたら嬉しい限りです。
スパークリングワイン(辛口)~コスパ最高の「カバ」
- 前菜、おつまみ系
- 炭酸なのでビール感覚で
- 守備範囲は広いので、好みによって何に合わせてもOK
- 食前酒としても食中酒としても
初心者の方には、一つの知識として「スパークリングワイン」と「シャンパン(シャンパーニュ)」はイコールではない、ということを是非覚えておいてほしいと思います。「スパークリングワイン」は世界の発泡性ワインの総称で、「シャンパン」は、フランスのシャンパーニュ地方で作られ、厳しい規定をクリアしたものしか名乗ることができない、特別なスパークリングワインなのです。もちろん品質も高いのですが、難点は高価なこと。ところが、スペインの「カヴァ(CAVA)」、シャンパンと同じ作り方をしているのに激安という、コスパの素晴らしいスパークリングワインなのです。その中でも、ご紹介している「1+1=3」は特にコスパが高く、そこらのシャンパンを凌ぐポテンシャルがあります!
スパークリングワイン(やや甘口)~「大人のコーラ」こと「ランブルスコ」
- チーズ全般
(特にパルミジャーノ・レッジャーノ) - 甘さ控えめのスイーツ
(特にベリー系フルーツ) - ピザ
- トマトソース系のパスタ
- 食前酒。甘口がいける方は食中酒でも
「ランブルスコ」は、イタリアの「赤」の「甘口」「スパークリングワイン」です。イチゴ、ブルーベリー、干しイチジクのような甘い香り、バランスのとれた柔らかい甘味と酸味、口当たりのよい微発泡が特徴で、「大人のコーラ」の異名を持ちます。甘さは控えめなので食事に合わせることもできなくはないですが、どちらかと言えばチーズやスイーツに合わせるのがおすすめ。甘口ワインは基本的にチーズ全般と合いますが、特にランブルスコは同じ産地のチーズ「パルミジャーノ・レッジャーノ」(日本で言われるところの「パルメザンチーズ」)との相性が抜群です。
白ワイン(爽やか系)~ニュージーランドのソーヴィニヨンブラン
- 前菜、サラダ系
- カルパッチョ
- ハーブを使った料理全般
- シェーブルチーズ(ヤギのチーズ)
- 枝豆
- 焼き魚
ワインが苦手な人の理由でよく聞くのは「酸っぱい」というもの。「酸味」はワインの大きな魅力の一つなのですが、残念ながら初心者の方にはなかなか分かってもらえない味覚のようです。特に爽やか系の白ワインは酸味を感じやすいのですが、さっぱりした料理には爽やか系のワインが重宝するのも事実。そこでおすすめしたいのが、ニュージーランド(以下”NZ”)のソーヴィニヨンブラン(以下”SB”)というブドウ品種です。SBは基本的に酸味が豊かな品種なのですが、NZのSBは比較的酸味が柔らかで、ミントやレモングラスなどの爽やかなハーブの香りが華やか、グレープフルーツや、熟した洋梨やパッションフルーツのような甘い香りもあり、初心者の方にも楽しんでもらえると思います。ハーブを使った料理との相性は最高ですが、他にもハーブのような青っぽい香りがするものとは何でも合います。面白いところでは、日本のハーブである山葵や、枝豆との相性もよいので、騙されたと思って是非合わせてみてください!
白ワイン(こってり系)~樽熟成したシャルドネ
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- 前菜、サラダ系
- 魚や肉のグリル
- バターやクリームを使った料理全般
- カマンベールなどのクリーミーな白カビ系チーズ
白ワインと赤ワインでは、断然赤ワインを好きな人のほうが多いようです。それはそれで理解できるのですが、実は世の中の食事は、白に合うもののほうが断然多いのです。例えばフレンチのコースを想像してみてください。たいていの場合赤に合うのはメインの一品だけ。それまでの全ての皿はむしろ白のほうが合うというケースが非常に多いです。下手したら、メインを魚や豚肉にした場合は、最初から最後まで白にするのがむしろ最高の選択、ということすらあります。そんなメインに合わせるのにふさわしい白ワインが「樽熟成したシャルドネ」です。果実味たっぷりで酸味は控えめ、樽の香りがバターを連想させ、クリーム系の料理や、シンプルな調理法の魚や肉の脂の甘みとよく合います。ご紹介しているチリの「コノスル」はスーパーなどでも見かけるコスパ抜群のワインですが、「レゼルバ」とついているものはワンランク上の味わいです!
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ロゼワイン(辛口)~絶対に辛口のロゼ「タヴェル」
- 前菜~メインまで何でも
- 中華料理
- トマト系の料理
- ブイヤベース
すでに述べた通り、赤ワインに合う料理は基本的にメインディッシュ系が多く、これは和洋中を問いません。つまり、一回の食事の中には、白ワインに合う料理もあれば赤ワインに合う料理もあるのが普通ですが、かと言って白ワインと赤ワインを両方開けられるという人は多くないはず。そこで重宝するのがロゼワインです。どの料理にもドンピシャで合うというわけではありませんが、どの料理ともそこそこ寄り添ってくれます。何を隠そう、実は管理人が家で飲むことが一番多いのはロゼワインなのです。しかし「ロゼは甘口が多いので苦手」と感じている人が多いようです。たしかに、辛口かどうか分かりにくロゼや、辛口と書いてあっても飲んでみたらちょっと甘いというロゼもあるのは事実。そんな方は是非、南仏の「タヴェル」というロゼを探してみてください。「タヴェル」と名がつくワインは絶対に完全辛口。甘口は一切ありません!
ロゼワイン(やや甘口)~女性におすすめ!Alc度数低めの「ロゼ・ダンジュ」
- 前菜(~メイン)
- 中華料理
- トマト系の料理、ピザ、パスタなど
- 梅肉を使った料理
- 甘さ控えめのスイーツ
(特にベリー系フルーツ) - チーズ全般
管理人自身、食事に合わせる場合は甘口よりは辛口のワインを好みますが、甘口ワインも捨てたものではありません。前述のランブルスコでも触れたように、チーズやスイーツには断然甘口ワインのほうが合います。「ロゼ・ダンジュ」は、フランス・ロワール地方で造られる「中甘口」のロゼワイン。こってり甘口ではないので、料理にも比較的合いやすく、色合いや味わい的にもトマト系の料理にはおすすめです。また、ロゼ・ダンジュはアルコール度数が5~12度と低めなので、アルコールの弱い方にもおすすめです(紹介しているラシュトーのロゼ・ダンジュは10.5度)。目安として「アルコール度数が低ければ低いほど甘口」と覚えておくと便利です。
赤ワイン(軽め)~ピノノワールの入門編「カリピノ」
- 軽めの肉料理
- 醤油を使った和食の煮物系料理
- 焼き鳥(タレ)
- 梅肉を使った料理
ワインには「軽め・重め」という表現がありますが、これは「ボディ」という言葉に置き換えられます。そして赤ワインにおける「ボディ」とは基本的に「渋み」を意味します。そんな中、ライト~ミディアムボディの代表格が「ピノ・ノワール(以下”ピノ”)」というブドウ品種で、ワインの渋みが苦手な方におすすめです。ピノは冷涼な産地を好み、栽培が難しく、酸味が豊かで繊細な味わいが特徴。「高貴な品種」とも呼ばれ、最も高価なワイン「ロマネ・コンティ」もピノです。しかし、軽めであるがゆえに酸味が目立ち、味わいも繊細なので、初心者にはなかなか良さが分かりにくい品種でもあります(管理人もそうでした!)。そこでおすすめしたいのがカリフォルニアのピノ。通称「カリピノ」とも呼ばれ、フランス・ブルゴーニュのものと比べると酸味が控えめで、果実味と樽の香りが強いのが特徴。これをピノの入り口として、徐々にブルゴーニュに進出すると、ピノの美味しさを理解しやすいのではないかと思います。
赤ワイン(重め)~がっつり濃厚!でも渋みが目立たない「シラーズ」
- 赤ワインで煮込んだ肉料理
- 牛ステーキの赤ワインソース
- ジンギスカン
- カレー
ミディアムボディのピノ・ノワールについて紹介しましたが、ミディアムボディとフルボディでは断然フルボディのファンのほうが多いようです。フルボディのワインと言えば、フランス・ボルドーが有名ですが、初心者の方の中には、ボルドーは渋みと酸味が気になるという方もいるかもしれません。そこで、その問題をクリアするのが、オーストラリアの「シラーズ」というブドウ品種です。渋みや黒コショウのようなスパイシー感もしっかりありながら、温暖な気候で育つために酸味は控えめ。煮詰めたジャムのような濃厚な果実味とアルコールのボリューム感が際立つ、飲み応え抜群のワインです。実はフランスの「シラー」というブドウ品種と本来同じなのですが、フランスのシラーはスパイシー感と酸味がより目立ち、印象はかなり異なります。
甘口ワイン(白)~ソーテルヌ”周辺”の高くない貴腐ワイン
- カレー
- フォワグラ
- チーズ全般(特にブルーチーズ)
- 甘み濃厚なスイーツ(クレームブリュレなど)
- 白っぽいドライフルーツ(アプリコット、イチジクなど)
甘口ワインを毛嫌いする人は多いですが、そんな方もほんの少しだけ心の目を開いてください。甘口ワインの魅力を知らないのはもったいないことです!「貴腐ワイン」とは、フランスのソーテルヌ地区が有名な、白のこってり甘口ワイン。ソーテルヌの貴腐ワインは概して高級ですが、実はその周辺地域で造られる貴腐ワインは、味わいはほとんど変わらないのに断然お買い得なのです。貴腐ワインはいろいろな楽しみ方がありますが、特にフォワグラとブルーチーズとの相性は鉄板。ブルーチーズにはハチミツを一たらしするとさらに寄り添います。面白いところではカレーライス。驚く方もいるかもしれませんが、カレーに添える福神漬、らっきょう、チャツネ、どれも甘いですよね。カレーと甘いものは合うのです。また、スイーツに合わせるのもおすすめ。甘いものに甘いもの?と眉をひそめる方もいるかもしれませんが、これこそがフランスの「マリアージュ(結婚)」の発想です。ただし甘みが強いスイーツでないと釣り合わないので、その点にはご注意を。
甘口ワイン(赤)~Alc20度、チョコと相性抜群の「ポート」
- 赤ワインで煮込んだ肉料理
- カレー
- チーズ全般(特にブルーチーズ)
- フォワグラ
- チョコレート、チョコ系スイーツ
- 黒っぽいドライフルーツ(レーズン、プルーンなど)
「ポート」とは、ポルトガル産の赤のこってり甘口ワインです。アルコール発酵の途中でブランデーを加えることによって発酵を止めるので、アルコール度数が高い(20度前後)のが特徴の一つ。料理との相性は貴腐ワインとよく似ており、チーズやスイーツとの相性はとてもよいです。あえてポートと貴腐ワインの違いを挙げるとすると、一つは、ポートは赤なので赤ワインで煮込んだ肉料理と合うということ。もう一つは、樽の香りがチョコレートと共通するので、チョコレート系のスイーツとの相性が抜群だということです。逆に、貴腐ワインのほうはチョコレートとの相性はあまりよくありません。