「日本ワインのレベルが上がった」と言われるようになって久しく、最近では海外のワインに引けをとらない素晴らしい日本ワインも増えてきました。しかしそれでも、日本ワインに対して「高い」というネガティブな印象を持っている人は多いのではないでしょうか?たしかに、チリやスペインなどのカジュアルなワインと比べると、日本ワインに割高感があることは否めません。それでも、探せば日本ワインにもコスパの優れたものはあります。さすがに1000円以下とはいきませんが、ここでは税抜きで1000円台(2000円未満)という比較的お安い値段で購入できる、コスパの高い日本ワインをご紹介します。(※掲載順は調査時点での最低価格順)
【赤】松本平ブラッククイーン/アルプス・ミュゼ・ドゥ・ヴァン
日本の赤ワインのブドウ品種と言えばマスカットベーリーAが有名ですが、ブラッククイーンを忘れてはいけません。濃い黒系果実の風味と一本筋の通った豊かな酸味があり、優れたワインを生み出す高いポテンシャルを持つ品種です。ただしその酸味ゆえに、ともすると酸っぱさの勝ったワインにもなりがちですが、ミュゼ・ドゥ・ヴァンのブラッククイーンは、ボジョレーヌーヴォーで使われる醸造法(マセラシオン・カルボニック)と、樽熟成を取り入れることにより、酸味をほどよく和らげ、力強くも果実味・酸味・樽香のバランスが絶妙な素晴らしいワインに仕上げています。海外のフルボディのワインと比べると軽めではありますが、それでも日本ワインで、しかもこの価格でこれだけの力強いワインができるのは驚異的。濃い赤ワインがお好きな方には超オススメです。
【白】甲州ドライ/シャトー酒折
日本を代表する白ワインの品種「甲州」は、まろやかな果実味と酸味の中にあるほのかな苦みが特徴ですが、全体的には穏やかな味わいで、良く言えばニュートラル、悪く言えば没個性なところがあります。そんな中、こちらシャトー酒折の甲州は、オレンジの花、キャンディ、リンゴの蜜、アプリコットなどの非常に華やかな香りが印象的。酸味も豊かでキリリとしていて、非常にメリハリのある味わいに仕上げているのがお見事。もちろん甲州らしい心地よい苦みもあります。塩焼き鳥や塩でいただく天ぷらと合わせると最高です。
【白】北海道ケルナー/北海道ワイン
ケルナーは主にドイツで栽培されている品種で、酸味が豊かで香りが華やか、全体的な印象はリースリングとやや似ています。日本では北海道での栽培に適し、最近では白ワイン用の主力品種として、その評価も高くなっています。全体的には軽めのすっきり爽やか系品種ですが、こちら北海道ワインのケルナーは、完熟ブドウのみを使用しているため、ケルナーにしてはしっかりした果実味・ボリューム感が感じられるのがポイント。レモンやグレープフルーツなど柑橘類の風味も豊かで、焼き魚や唐揚げなど、レモンを添えるような料理との相性が抜群です。
【赤】アンサンブル 藍茜(あいあかね)/シャトーメルシャン
「アンサンブル」とは、音楽用語で、2人以上が同時に演奏することを意味しますが、その名の通り、メルローを主体としてマスカットベーリーAなど複数の品種をブレンドしたのがこのワインです(※年によってブレンドする品種や割合は変わる)。香りは、マスカットベーリーAらしいイチゴキャンディーっぽさがが中心ですが、その中にメルローの土っぽさやスパイス、樽熟成に由来するバニラの香りがあり、意外と複雑。味わいは良い意味で軽いため、食中酒として最適で、醤油を使った和食料理全般と幅広く合うでしょう。
【白】甲州シュールリー/フジクレール
「シュール・リー」とは、ワインの発酵過程で、ワインを酵母の澱と接触した状態で静置しておく方法のことを言います。これにより、酵母に含まれるアミノ酸がワインに溶け込み、ワインに旨味や複雑さを与えます。一般的にはパンやビスケットなどの香りが加わることが多いですが、こちらの甲州は、バターっぽいクリーミーさがあるのが特徴(MLFによる可能性もあるが詳細は不明)。青りんごや柑橘のような爽やかもありますが酸味自体は穏やかで、クリーミーさとも相まって、キレと言うよりはまろやかさが前面に出た味わいに仕上がっています。シュール・リーという技法で甲州の新たな魅力を引き出した傑作と言えるでしょう。幅広い料理に合いますが、特にクリームやごま油を使った料理と合わせるのにオススメ。
【ロゼ・泡】てぐみマスカットベリー/丹波ワイン
マスカットベーリーA 100%のロゼスパークリング。酸化防止剤不使用、濾過もしていないとのことで薄濁りがあるのが見た目にも楽しく、また味わいにもブドウ本来の複雑味や、酵母の風味がしっかり感じられ好印象です。香りはマスカットベーリーAらしいストロベリージャムやラベンダーのような華やかさが強いですが、味わってみると意外にドライ。苦み・渋みもあるので、前菜からメインまで幅広い料理に合わせることができ、食中酒として重宝するでしょう。
【赤】アジロン百/マルサン葡萄酒
アジロンダックとは、生産量が非常に少なく「幻のブドウ」とも呼ばれます。一般的に言われる特徴としてはは、良く言えばイチゴキャンディの香り、悪く言えばハイチューのような人工的な香りで、正直なところワイン用ブドウとしては評価は高くありません。ところが、こちらの「アジロン百」は、アジロンダックらしい華やかな香りを残しつつも、程よい酸味やスパイシーなニュアンスもあり、意外と言っては失礼ですが、ワインとして非常に完成度が高くまとまっています。少し冷やしめで飲むのがオススメ。タレの焼き鳥や中華料理、イチゴジャムを添えたブルーチーズなどとよく合います。
【白】キザンワイン 白/機山ワイナリー
甲州にもさまざまなタイプがありますが、こちらのキザンワインは、「すっきり軽やか」ではなく、「力強く重厚」なタイプ。おそらく果皮を果汁に漬け込むスキンコンタクトをしっかりしているのでしょう、甲州の苦み・旨味を存分に引き出しており、芳醇でコク深い大人の味わいです。山菜やゴーヤ、鮎やアワビなどの苦みの効いた食材と好相性なのはもちろん、肉をシンプルに塩でいただくのに合わせると、ワインが調味料代わりとなり、肉をより一層味わい深いものにしてくれるでしょう。
【白】清酒酵母仕込 甲州/島根ワイナリー
島根県産の甲州ブドウを、珍しい日本酒の酵母を使って作ったワイン。藁のような香ばしい香りが特徴的で、他にも柑橘やハチミツ、ほのかに甘い醤油や、吟醸香も感じられ、やはりどことなく日本酒を感じさせます。味わいは、一口目はすっきり爽やかという印象ですが、余韻にじんわりと滋味深い旨味が広がり、飲み応えも十分感じるのが面白いです。和食全般と合うのは間違いないですが、特に醤油と魚介との相性は抜群で、寿司と合わせたら間違いありません。
【白】ルバイヤート 甲州シュール・リー/丸藤葡萄酒工業
柑橘や青りんごの香りにフレッシュな酸味、心地よい苦みという、奇をてらわないクラシックな味わいの甲州。それでいてしっかりと旨味・厚みを感じられるのは、シュール・リー且つ濾過をあまりしないという製法の賜物でしょう。この価格帯でこれだけさまざまな要素が高レベルでバランスがとれているのは凄いことであり、もっと評価されてよいワインです。ちなみに、ANAのファーストクラスとJALのビジネスクラスで採用されたワインでもあり、このワインの品質の高さを物語っています。甲州の魅力を知りたい人にオススメ。