「ドイツワインを買ってみたら甘くて食事に合わせられなかった」という話を聞くことがあります。ドイツでは伝統的に甘口ワインに重きが置かれてきましたが、近年は優れた辛口を造る生産者も増えてきています。甘口ワインも、ブドウ品種のリースリングは酸が非常に豊富なため、ただ甘ったるいわけではなく一本筋の通った高貴な味わいであることに注目してください。ご紹介しているのはいずれも間違いない素晴らしい生産者。是非ドイツワインを試してみてください!
エゴン・ミュラー(Egon Muller)
- 創業年:1797年
- 所在地:ドイツ/ザール地区/ヴィルティンゲン村
- 銘柄:シャルツホーフベルガー、シャルツーホーフ・リースリング、シャトー・ベラ(スロヴァキアでのジョイントベンチャー)など
2014年11月試飲
数多くあるモーゼル醸造所の中でも別格の威厳を誇るエゴン・ミュラー家。跡取りは代々同じ名前を名乗るため、現当主は「エゴン・ミュラー4世」。モーゼル(ザール)最高の畑シャルツホーフベルクの一等地を所有し、甘美な甘口のリースリングのみを手掛けています。ブドウ畑には19世紀にまで遡る古樹も見られ、防カビ剤をごく少量する以外は化学薬品は一切不使用。ワインは大樽またはステンレスタンクで発酵されます。シャルツホーフベルクの他、醸造所名のお手軽なワインがあるのはありがたく、普段飲みならこれで十分。
エゴン・ミュラーについての豆知識
ラベルにあるAPナンバーのうち、大きく書いてあるのが樽番号。これによって同じ等級でも価格が異なりますが、何番が上等なのかは公表されていません。
ヨハン・ヨゼフ・プリュム(Joh.Jos.Prum)
- 創業年:1911年
- 所在地:ドイツ/モーゼル地区/ヴェーレン村
- 銘柄:ヴェーレナー・ゾンネンウア、ツェルティンガー・ゾンネンウアー、グラーヒャー・ヒンメルライヒ、ベルンカステラー・バートステューベなど
2011年5月試飲
モーゼルを代表する造り手がJJ・プリュムこと、ヨハン・ヨゼフ・プリュム家。この醸造所の代名詞の畑が、急峻なヴェーレナー・ゾンネンウアで、最大の面積を所有します。「ゾンネンウア」は「日時計」という意味ですが、こう名付けられた由来は、先祖のヨドクス・プリュムがヴェーレン村とツェルティンゲン村に日時計を作ったことによります。品種はもちろんリースリング。グラスファイバー製のタンクまたは大樽で醸造され、強靭な酸とミネラルを備えた極めて長命なワインになります。甘口なのに若いうちは固いというのが凄い!
ヨハン・ヨゼフ・プリュムについての豆知識
先祖のヨドクス・プリュムが作ったという日時計は、ブドウ畑に出た労働者が時間が分かるようにと作られたもので、今もヴェーレン村ツェルティンゲン村に現存します。
フリードリッヒ・ベッカー(Friedrich Becker)
- 創業年:1973年
- 所在地:ドイツ/ファルツ地方/シュヴァイゲン村
- 銘柄:ピノ・ノワール・ターフェルワイン・トロッケン、シュペートブルグンダー・ザンクト・パウル・グローセスゲヴェックスなど
2013年1月試飲
「ドイツのDRC」の異名をとる、シュペートブルグンダー(=ピノ・ノワール)の名手。もとはファルツ協同組合の跡継ぎでしたが、そこでは自分の理想のワインが造れないと、家族の反対を押し切って独立しました。醸造所があるのは、ファルツの最南端で、歴史のいたずらによって畑の一部はフランスのアルザスにも位置します。ベッカーが所有するザンクト・パウル畑もアルザス側に属し、その区画から最上のヴィンテージにしか造られない「ピノ・ノワール(※「シュペートブルグンダー」ではない!)・ターフェルヴァイン」はマニア垂涎!
フリードリッヒ・ベッカーについての豆知識
ベッカーではシュペートブルグンダー(=ピノ・ノワール)の収量を、ヘクタール当たり35hlに抑えています。これはブルゴーニュの特級畑と同等の値!
ゲオルグ・ブロイヤー(Georg Breuer)
- 創業年:1880年
- 所在地:ドイツ/ラインガウ地区/リューデスハイム村
- 銘柄:ベルク・シュロスベルク・リューデスハイム、ノンネンベルク・ラウエンタール・モノポール、ベルク・ロットランド・リューデスハイム、テラ・モントーサ、リースリング・ソヴァージュなど
2015年4月試飲
ラインガウにおける辛口リースリングのスペシャリスト。2004年に他界したベルンハルト・ブロイヤーに代わって現在蔵元を務めるのは娘のテレーザ。ドイツでは辛口には「トロッケン」と表記するのが普通ですが、ブロイヤーではワインは辛口が当然であるとして表記しません。むしろ甘口を造った場合にその旨を表記するべきと主張しています。辛口へのこだわりは、ワインは常に食事とともに楽しむべきとの信念ゆえ。
ゲオルグ・ブロイヤーについての豆知識
ブロイヤーは畑の格付けも独自の方法。裏ラベルにはⅠ~Ⅳまで4段階の表示があり、若い数字ほど上等。ブルゴーニュに喩えるなら、Ⅰ=特級、Ⅱ=1級、Ⅲ=村名、Ⅳ=広域、といったところか。
ケラー(Keller)
- 創業年:1789年
- 所在地:ドイツ/ラインヘッセン地方/ダルスハイム村
- 銘柄:G-MAXリースリング・トロッケン、ダルスハイマー・フーバッカー・トロッケン・グローセスゲヴェックス、ヴァイサーブルグンダー・トロッケンなど
2015年2月試飲
リープフラウミルヒの主産地として、大量生産ワインのイメージが強いラインヘッセンにあって、品質重視の姿勢を貫き、10年間に渡りゴー・ミヨー・ドイツワインガイドの最優秀醸造所に選ばれ続けたケラー。ダルスハイム村を中心に12.5ヘクタールのブドウ畑を所有。中でもケラーを一躍スターにしたのが、グローセスゲヴェックス(特級畑)のフーバッカーです。ドイツ最高の辛口リースリングと謳われるG-MAX(ジー・マックス)は入手困難。見つけたら迷わず買い!
ケラーについての豆知識
石灰質の豊富なダルスハイマー・ヒュルゲルにシュペートブルグンダーを植え、1997年から赤ワインを造り始めたところ、初年度からドイツ最高の赤に選ばれました。