近年、「オレンジワイン」がブームになっています。オレジンワインとは、白か赤かと言ったら白ワインで、白ブドウを、赤ワイン同様の製法で果皮ごと漬け込むこと(=マセラシオン、醸し)によって、ワインに果皮の色がついてオレンジがかった白ワインのこと。その色合いや醸造方法から、「アンバーワイン」や「醸しワイン」と呼ばれることもあります。色のみならず、味わいに厚みが加わり、普通の白ワインよりも幅広い料理に合うので、食中酒として魅力的です。
そんなオレンジワインですが、軽やかなものからディープなものまで、味わいもさまざま。ここでは、おすすめのオレンジワインを厳選して5つご紹介します。
追記:近年どれも異常な人気で品薄状態です。同じ造り手のオレンジワインならご紹介している銘柄以外でも似た味わいを楽しめますので、お試しください。
ピトス・ビアンコ/コス
近年評価が急上昇しているイタリア・シチリア州の造り手。最新鋭の醸造設備・技術を持ちながら、このオレンジワインに関しては、昔ながらのアンフォラ(素焼きの壺)を使った発酵・醸造で、ブドウの純粋な味わいや土地の特徴をワインに反映させることにこだわっています。マセラシオン期間は約4ヶ月と長めですが色合いはその割には穏やか。ハーブやスパイスの香りと、ミネラルや磯の風味が特徴的で、深みのある味わいを豊かな酸が引き締めています。幅広い料理に合いますが、特に生姜を使った料理や、魚介とよく合います。クセが強すぎないので、オレンジワインの入門編としてもオススメです。
ヴィーノ・ビアンコ/ダリオ・プリンチッチ
現在のオレンジワインブームの火付け役と言ってもよいのが、このダリオ・プリンチッチ。農薬不使用の自然派で、自然ワイン特有の牧草のようなニュアンスがありつつ、バランスの良い造りに定評があります。最もベーシックな「ヴィーノ・ビアンコ」はマセラシオンの期間は約1週間と比較的短めですが、非常に風味豊か。特に顕著なのが紅茶の香りで、他にドライフラワー、オレンジビール、ハーブなど複雑でユニークです。ただし残念ながら最近入手困難の模様。予算が許せば、これよりも上級キュヴェの「ヤーコット」や「トレベツ」ならそこそこ入手可能です。これらはマセラシオン期間がより長いのでさらに複雑な香りがあり、もちろんオススメできます。
リボッラ・ジャッラ/ラディコン
そのプリンチッチのワイン造りにおける先生とも言える存在がこのラディコン。自然派でもあり、イタリアでのいわゆるオレンジワイン製法の先駆者です。マセラシオン期間は約2週間でプリンチッチと大差ありませんが、違うのはその後の熟成期間で、なんと樽と瓶内を合わせて最低5年も熟成するというこだわり!そのために酸化熟成して色合いもかなり濃くなり、シェリーにも似た独特の味わいのワインが生まれます。もはやこれは「オレンジワイン」を超えた「ラディコン」というジャンルのワインと言っても過言ではないでしょう。個性的なオレンジワインを味わいたい方にオススメです。ただし大変高価で、それでも入手困難。ベーシックな「オスラーヴィエ」ならそこそこ入手可能で、こちらでも十分ラディコンの世界観を味わうことができます。
ピノ・グリージョ/ダミアン・ポドヴェルシッチ
このダミアン・ポドヴェルシッチは、前出のプリンチッチやラディコン同様、イタリア、フリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州の造り手。さまざまな品種でオレンジワインを手掛けており、どれも美味しいですが、なかでも特にオススメしたいのはピノ・グリージョです。元々糖度が高く果皮の色の濃い品種であるピノ・グリージョを、完熟させてから収穫し、約1ヶ月と長めにマセラシオン。果皮の色も旨みもたっぷり抽出され、その色はもはや赤!さらには2つの異なる年のブドウをブレンドするという型破りな手法を取り、ワインに奥行きを出しています。アルコール度数も14.5度と高く、飲み応えがありながら、エレガントさも併せ持つ完成度の高いワインです。
甲州F.O.S/ココ・ファーム・ワイナリー
イタリアワインばかりでは面白くないので、最後に日本ワイン、甲州のオレンジワインをご紹介します。ちなみにワイン名の「F.O.S」とは「Fermented on Skin(果皮に接触させた[=マセラシオンした]発酵)」の略。甲州という品種は全般的には軽やかで、さっぱりした料理に合わせるには良いのですが、もう少しコクが欲しいと思うこともあります。その点、この「甲州F.O.S.」は、甲州の旨みをこれでもかとばかりに引き出しており、飲み応え抜群。ドライフルーツやマーマレードのような凝縮した柑橘や蜂蜜の香りがある他、甲州の特徴でもある苦みも濃縮されていいアクセントになっています。幅広い和食と合わせるのに最適です。